田中一村 新たなる全貌

本日は千葉市美術館まで「田中一村 新たなる全貌」を見にゆく。
NHK日曜美術館「田中一村 奄美の陰影」が先日再放送されたこともあり、また連休の最終日ということもあり、美術館はお祭りの様な人出だった。「またエラい日に来てしまったなぁ」と少し後悔。
まともに作品鑑賞出来るかと心配にもなったが、結論から言わせてもらえば、全くの杞憂!
どんなに会場が賑やかであっても、人垣の向こうのに在る一村の作品は変わらぬ輝きを放っている。
様々な展示を見てきたつもりだが、一村の作品の持つ力は群を抜いている。他のお客さんも圧倒されているのがよくわかる。見る側である観客の熱気と、見られる側の作品の佇まいが一体となって会場内に充満していた。
鑑賞中、終止毛穴が開きっぱなしでした。

一村といえば、中央画壇で認められず決別し、失意の中で奄美へ移住した不遇の天才画家という文脈で紹介される事が多いのだが、作品だけを見る限りそのような感じは受けとれない。
たしかに齢8歳にしてあの様な腕前を見せられれば「神童」「天才」と称されてもしかたないだろう、しかし展示作品からは生涯に渡り自身の作品を刷新し、追求することをやめなかった「努力の人」の横顔が見て取れる。
もちろん芸大を中退せざるをえなかったこと、支援者との絶縁や公募展での落選などは一村にとってもショックな出来事だったのだろうが、そんな事に腐ることなく自分を信じ、新たな作風、新たなモチーフを常に追求し続け、その中で導かれるように奄美に辿り着いた。
そして中央画壇と距離をおいたからこそに、一村独自の作品世界を己の心の赴くままに追求することが出来たのだろう。
それは一村の明確な意思の現れであり、「人気作家だから」とか「不遇の身の上だから」とか、そのような言葉には決して縛られない、一人の幸せな「ゑかき」の姿である。
そんな一村のありのままの姿と対峙することができた、この上なく幸福な時間でした。

「人生の最終まで絵を描き続ける事ができました。感謝は言葉で尽くせません。ありがとうございました。」

田中一村
(自身の古希を迎え、彼の長年の理解者である知人に贈った絵に添えられた手紙より)

展示は千葉市美術館にて9月26日(日)までの開催です。

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