毒を食む

彼岸花の咲く、畦道の向こうから死者たちがやってくる。
其の花の赤は血の色だ。

「彼岸花の咲く土壌には亡骸が埋まっている」

幼い頃、母親からそう教えられた。
血の赤を吸い上げ、突如として妖しく咲き乱れる其の花に、少年は欲情を憶えた。
今思えば、彼岸花の鱗茎に含まれる有毒物質から我が子を遠ざけようとする、親なりの方便なのだろうが。
その話を聞いてからというもの、僕の其の花に対する得も言われぬ感情は更に強固なものとなった。

雀色時、畦道に、死人花を凝視する少年が一人。

「流れ星公園」より。

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