水島貴大写真展「東京ロンリーハートランド」

明日よりトーテムポールフォトギャラリーにて、この春に卒業したばかりのゼミ生の展示を行います。
4月25日(土) 18:00よりはレセプションパーティーもおこないますので、こちらもお気軽に参加ください。
展覧会にあわせて作者より寄稿してもらった文章を以下に掲載いたします。

 高校生の頃、僕は年上の女性と付き合っていた。8つ年上のキレイな女の人だった。毎朝五時頃に仕事から帰宅する彼女を、僕は彼女の家でゆっくりと待つ、そんな毎日のことだった。ある朝に、彼女が帰宅する少し前に買い物に出かけた時のこと。いつも立ち寄る近くのコンビニで煙草とジュースを買い物しての帰り道。もうすぐ帰ってくるだろう彼女のことを考えて、少し急ぎ足で歩いていた。道路を曲がった路地の先にある彼女のアパート。その路地に入りかけると途中に見知らぬ二人の男女が見えた。微動だにせずに抱き合った二人の男女の姿、悪い予感がした。顔は見えなかったけれど、それはよく見れば彼女とそれと見知らぬ男だった。僕は立ち止まったけれど、もう一度歩きだし、顔をふせながら静かに男女の横を通り過ぎて彼女の部屋への階段を上った。
 それは思いがけないできごとのようだったけれど、今考えてみればいつも心許ない朝だった気がする。部屋に戻ってからはすぐに、僕はベランダの窓をそっと開け放して下で抱き合いキスをし合うその男女を上から眺めて見てみた。僕は何をしているのだろう、見たくはないはずのものを見たくなる自分のおかしな感情に笑いがこみ上げた。買った煙草に火をつけて一服、くゆらした煙を手で払いすぐにその火を消して部屋に戻った。彼女は煙草が嫌いだった。それから少し待つと何も知らぬだろう彼女はやはり素知らぬ顔で帰宅した、ただいまとおかえりをいつものように交わして、僕はすぐにセックスを強要した。帰宅後の間も無い行為をいやがる彼女を、さっきのように、少し笑いながら、うんと愛を込めたセックスをした。
 今になって、あのときの僕はいったい何を欲しがっていたんだろうかと考える。あのひとは嘘つきだった、けれど、今その嘘すらも愛しく思えるのは、そのときのその嘘がなければきっと僕は困っていたからだろう。あのときに僕が欲しがった何かが写真の中には写し出されているように思う。嘘と本当の間の中で欲望したこと、それを正しく直視できる一瞬を、今僕は写真機と共に探しているのだ。

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