花恋さん

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2013年元旦の新宿、初詣もそっちのけ、いつものように撮影に出かける。
一年の計は元旦にあり。昨年末は撮れない日々が続いていたので「今年こそは!」という意気込みもあった。しかしまぁ、駅前を歩く人もまばらだし、年を跨いだとはいえたかだか昨日と今日、目に見える変化があるわけでもない。カメラのフィルムカウンターは相変わらず進む気配なく、今日もまた沈む夕日を見送った。
意気消沈して突っ立っていると、僕の目の前数十センチ、美しい瑠璃色の晴れ着を纏った女性が颯爽と横切ったのを見た。慌てて後を追いかける。しかし声をかける前に、その女性一行は某店に入ってしまった。なにがなんでも写真を撮りたかったので、寒空の下で一行が店を出るのを今か今かと待ちわびた。その間、撮影了承を頂けることを前提にして、何処でどの様に撮ろうかという空想を膨らませ、同時に新しいフィルムを装填し、ストロボのバッテリーも新品に取り替える。一行が店を出るまでの数十分、路上で煙草をふかしながら入念に撮影準備をする。この不審者ぶりには自覚的であり、その自らの姿は嫌いではない。
しばらくして店を後にした一行を確認するやいなや、再び後を追い声を掛ける。彼女はかなり驚いた様子で〈快諾〉というには程遠い反応ではあったが、どうにか撮影許可を頂けた。たぶん僕の勢いが怖かったんだと思う。
そんな感じで撮影したこの写真。今回の展示にも使用させて頂いております。

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その花恋さんが先日ギャラリーを訪れてくれた。撮影後に案内葉書を渡してはいたのだが、まさか来てくれるとは思ってもいなかった。嬉しくなって根掘り葉掘り質問をぶつける。その一つひとつに彼女は真摯に答えてくれて、とてもよい時間を過ごすことができました。
ほんの一瞬の出会いや発見が永続的なものに成ってゆく。これも写真の好きな所以です。

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