Zheng Chengwei Exhibition “C403 Uncertain”

 中国で生まれ育った私、日本という異文化で暮らす中、自身のアイデンティティの不確かさを感じ始めました。
 「私」とは何を指す言葉なのか。また「私」という存在の曖昧さを表現するためには何が必要なのか。それを考えるうちに、内面に在る自己が引き裂かれ、無限の淵に沈んで行くような気がしました。

 その葛藤の末に生まれたのが今回の作品です。

 文化を象徴する衣服を脱ぎ捨ててカメラの前に立ち、自分自身の存在を確かめるように身体全体でパフォーマンスを行い、撮影しました。
 しかしそれだけでは私の葛藤を表現できないと感じたため、暗室内でさらに身体を使い、”Metaphysics” (感覚や経験を超えた世界)を表現するために偶然性に委ねた現像処理を施し、いわば暗室で二度目の撮影を行なったのです。

 私という存在は、まるで小さな川のようなもので、文化という名の支流が複雑に合流しています。
それは、時とともに一つの流れになり、海に流れ出るように消えてしまうかもしれません。
だからこそ、写真という時を止めるメディアで「いま」表現しておきたかったのです。

 異文化の中で揺れる自己同一性、身体と意識の葛藤が私のテーマです。

profile
中國浙江省溫州市出身
現在、東京ビジュアルアーツ写真学科ドキュメンタリー在籍中
2019年、Taipei Art Book Fair 出品(Lakuda Tokyo)

明日からTOTEM POLE PHOTO GALLERYでは、私が講師を務める写真学校のゼミ生の個展を二会期に渡り開催いたします。まずは一人目、テイテイこと Zheng Chengwei / 鄭程煒写真展「C403 Uncertain」。入学当初からモノクロームの暗室作業に並々ならぬ情熱を持って作品制作を続けた彼。自己のアイディンティティに向かいながら、独自の暗室技法を駆使して制作した作品を展示いたします。観賞位置によって照明の反射が様々な表情を見せる展示となっています。視線を動かしながら観賞いだだけますと幸いです。
会期中、作者在廊して皆様のご来場をお待ちしております。若い写真家の成長のためにも、忌憚なき意見をお聞かせください。

搬入作業中のテイテイ。脚立の天板に立ってはいけません!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です