Archival Pigment Print

昨日から開始した写真展Tokyo Circulation / Tokyo Strut」 @日本橋髙島屋 美術画廊X では全部で87枚の作品を展示しているのだが、そのうちの三枚の大きい作品については「Archival Pigment Print」で制作した。この技法は平たく言えばおなじみの「インクジェットプリント」なのだが、ファインアート紙に耐候性のある顔料インクを使用して出力したものが「Archival Pigment Print」との表記ができるらしい。今回この技法を使用した一番の理由としては、やはり常用印画紙の入手性の悪さ。去年開催した写真展「Tokyo Debugger@Zen Foto Galleryでは常用の印画紙「ILFORD MGFBWT」の42インチロール紙を使用したのだが、その時も国内に在庫はなく、本国(イギリス)のILFORD社の倉庫にあるストックを送ってもらったのだが、輸送の都合でイギリス→アメリカ→日本と、かなり煩雑な手続きとなった。当然輸送費も納期も嵩むことになる。またこの印画紙、常温では保存性が悪く、使用前の状態では劣化が早い。特に高温多湿の日本では冷蔵保存の必要があるが、個人で42インチ幅の製品を冷蔵保存する環境を確保するのも困難である。
もう一つの前向きなの理由としては、知人のラボ「Sparking Art Studio」にPHASE ONE XF IQ4のスキャニングシステムがあるということだった。このシステムは従来のような回転式のスキャナーとは違い、ワンショットで一億五千万画素の画像が得られる。言葉のニュアンスが難しいのだが、このシステムでスキャンされたデータを見ると、従来のスキャナーよりも何か「写真らしい」感じがしてとても気に入っている。
そしてプリント用紙には、色々吟味した上でHahnemuhle社の「FineArt Baryta Satin」を使用した。先述のPHASE ONEのスキャンデータと相まって、バライタ印画紙による暗室プリントと比較しても遜色のない納得の行く仕上がりとなった。
基本的には暗室での制作が好きだし、これからも継続してゆきたいと思っているのだが、現状では感光材料や薬品の枯渇と高騰はとどまるところを知らない。新しい技術や方法論にも背を向けること無く、積極的に取り入れてゆきたいと考えている。

それでも基準は暗室でのプリント。なるべくそれに近づけるように何度もシュミレートする。

デジタルプリントとはいえ、納得するクオリティーが得られるとやはり興奮する。

日曜日の開放教室をお借りして黙々とプリント作業。この恵まれた環境にも感謝しています。

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